いちごいちえ




るぅに、慣れる……。

そんな事、できないよ。


どんなに一緒に居ても、ふとした仕草や表情に、こんなにもドキドキするのに。


触れられるだけで、キスをする度に、胸が苦しい程切なくなるのに、私はいつまでも慣れるなんてできない気がするんだ。



「慣れない…よ…」



目を逸らして、瑠衣斗からの視線から思わず逃げる。


倒れ込んだ瑠衣斗の逞しい腕の中は、私を余裕で包み込んでしまう。


髪を撫でていた大きな手のひらが、滑るようにゆっくりと私の頬に触れる。


そのまま顔を瑠衣斗の方へ向けられ、恥ずかしさに口を噤んだ。


少しだけ屈んで、顔を近付けた瑠衣斗が、柔らかく微笑む。


愛おしそうに私を見つめる瞳は、部屋の照明を取り込んで薄く輝く。



「実は俺も…慣れない」



「…え?」



真っ直ぐ見つめられて、目がそらせない。


瑠衣斗が口にする言葉が、そのまま瑠衣斗から目を逸らせなくする。



「ももが好きだって言ってくれたり、こうして触れられるのが、まだ夢なんじゃないかって」



言葉も出ない私を、瑠衣斗が優しく抱きしめる。


手の中の存在を確かめるように、瑠衣斗が背中を撫でる。



押し付けた耳に伝わる、瑠衣斗の胸の音が、強く鼓動している事に気付き、思わず瑠衣斗にしがみついた。



嬉しくて、本当に瑠衣斗を愛おしく思った。


なのに。



「だから一緒に風呂入るぞ」



「だから、ってそこからどうだからに繋がるの!?」



「細かい事は気にしなくていい。一緒に入るからな」



「気にするよっ!!」




無理やりすぎる瑠衣斗の言葉に、私はやっぱり瑠衣斗には適わないのだろう。
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