いちごいちえ




まるで全てがスローモーションのように、目に映るモノが流れるように見える。




優しく顎に添えられた指先、間近で私を見つめる瞳。


風によって流される、サラサラの髪。


優しく囁かれた、私の名前。


そして、ゆっくりと伏せられた、長い睫毛。




触れられた唇が熱くて、その熱に当てられるように更に頬が熱くなる。


優しく何度も解されると、熱い舌で唇をノックされ、それが合図のように私はたまらず薄く唇を開けた。



「ん…っ、まっ…」



優しくかき混ぜられると、体に火が灯ったように芯から熱くなる。


息苦しさに酸素を求めて肩を押しても、その手さえも絡め取られ、抵抗できなくさせられてしまう。


全てを味わい尽くしてしまうように、何度も角度を変え、私の中を撫でていく。



いつの間にか添えられた後頭部の大きな手が、私を離す事を許さないと言うように、しっかりと固定されている。



瑠衣斗にキスされると、自分が自分じゃなくなってしまうようで、周りが全く見えなくなるんだ。


いつの間にか夢中にさせられていて、もっと欲しいと自ら瑠衣斗を求めている自分が居る。



多分きっと、お互いがお互いを求めてしまい、ブレーキが効かなくなってしまうんだ。



そんな中、瑠衣斗はいつも最後までしない。




「…やばいな」



少しも離れない内に、瑠衣斗がそう捲くし立てる。


でもほんの一瞬で、再び激しく塞がれる唇。


痺れる頭で瑠衣斗を必死に受け止めながら、止まれない衝動に抵抗も何もなかった。



頭では止めなきゃと思うのに、体はそれを抑える事ができない。


瑠衣斗に与えられる感覚に、私の理性は麻痺させられるんだ。
< 21 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop