いちごいちえ




しばらくじゃれ合っていると、背後で再びアナウンスが流れる。


ハッとして身を固めて瑠衣斗を見上げると、怪しく口元だけで笑った瑠衣斗に、顔が引きつった。



「さ、入ろうか」



「や…ヤダ。無理」



抵抗してみても、笑顔を崩さない瑠衣斗に、冷や汗が背中を伝った気がした。


動かない私を見つめたままだった瑠衣斗が、ふとゆっくりと動く。



「……へ、うわぁぁ」



「しょうがない。運んでやるよ」



視線でその動きを見守っていた私は、次の瞬間、気付いた時にはもう遅かった。


高く抱きかかえられてしまい、反動で思わず瑠衣斗にしがみつく。


暴れたら落ちてしまいそうで、しがみついた手が離せない。



「ちょっとー!!るぅー!!」



「なんでそんなに嫌がる?俺は常に一緒に居たいのに」



「え…?ってそうじゃなくて!!も、もう少し慣れてからで!!」



「どうやって一緒に風呂入るの慣れてくんだよ」



「う……」


た、確かに。


何度も一緒に入らなきゃ、慣れっこないよね!?


ってそうじゃなくて……。



そう思うものの、瑠衣斗がズンズンとバスルームへと進む。


真っ赤になってしがみつくものの、瑠衣斗の手と温もりがあまりにも心地良く、素直に大人しく運ばれてしまう。



あっと言う間に目的地に到着すると、開かれた扉がすぐに閉められた。



ゆっくりと床に降ろされると、カチコチに固まった私を、瑠衣斗が背中を屈めて顔を覗き込んだ。



色素の薄い瞳に、顔を真っ赤にした私が、不安げに移り込んでいた。
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