いちごいちえ
どうしよう。
なんかもう、すでに恥ずかしすぎて、どうにかなりそうなんだけど。
ドキドキと無駄に鼓動する自分の胸が、治まる気配は微動もない。
一緒にお風呂に入るのは初めてではないにしろ、あまりにも状況が違いすぎるんだ。
「じゃあ、俺が先に入ってる。だから、後から入ってきてくれるか?」
楽しそうな意地悪な笑顔に、唇を横に引き結ぶ。
後も先も、どっちも選べないからいいんだけど……。
それって、どっちみち一緒に入る事には変わりないんだし、恥ずかしさは変わらないよね!?
何も言えないで目で訴えてみるが、そんなモノ伝わる訳がない。
それをどう捉えたのか、一瞬キョトンとした瑠衣斗が、再び柔らかい笑顔で口を開く。
「あ、先がいいか?」
「…いい。後から…」
服を脱いでる途中に、ここに入ってこられそうで怖いもん。
とは絶対に言えない。
私の言葉に、嬉しそうに笑った瑠衣斗が、ようやく背筋を伸ばす。
「分かった。じゃあ、入って来なかったら、後で三倍で返ってくるからな」
「え!?…って、ちょっと!!」
瑠衣斗のビックリな脅し文句に、思わず顔を上げた途端、瑠衣斗の逞しい上半身が露わになる。
高校からの付き合いだし、何度も見ているとは言え、心境が全く違う今となっては、目に毒だ。
それに、今は燦々と照明もついていて、リアルにその肌が目に入ってしまう。
「わ、わわっ、私、あ、あっちに居るっ!!」
「逃げんなよー?すぐ入って来いよ〜?」
バタバタと脱衣場を抜けだし、バタンと扉を閉める。
そして、すぐにハッとした。
……しまった。
私、先に入ってなきゃ……るぅから入る時丸見えじゃん!!
え!?マジで!?
今度こそ、完全にパニックに陥った私だった。