いちごいちえ




「ちょっとは落ち着けよ」



くしゃっと笑った瑠衣斗に、脈拍数はどんどん上がる。


顔が熱いのは、湯船に浸かっているだけではないだろう。



「お、落ち着けない。洗えない」



「じゃ、代わりに俺がももを洗ってやるな」



「代わり!?ってなに!?」



「楽しいなあ」



余裕の瑠衣斗に、恥ずかしさで逆上せてしまいそうな私。


初めてこんな風に、付き合っている人とお風呂に入る私にとって、何もかもが恥ずかしすぎて身動きが取れない。


それどころか、もうどうすればいいのか、頭が働かない。




「じゃあ目ぇ瞑ってるから。逆上せるぞ?」



「…絶対開けない?」



「開けない。はい」




そう言って頭を下げた瑠衣斗は、顔を覗き込むときちんと目を閉じ、動く様子もない。


ここは言う通りにしなければ、いつまで経ってもこのままの状態だろう。


ドキドキ高鳴る鼓動を抑えながら、ゆっくりと伸びてシャワーの柄を掴む。


勢い良くお湯が吹き出すシャワーを、瑠衣斗の髪へと向ける。


色が濃くなり、サラサラと流れる瑠衣斗の髪が、とても綺麗だと思った。



「腰痛めそう。俺の後ろに回って」



「え!?なんで!?」



「……だから、腰痛めそうだから」



突然発せられた瑠衣斗の言葉に、見とれていた私は過剰に反応してしまう。


シャワーを握り締めたまま、再び湯船に浸かると同時に、瑠衣斗が顔を上げた。



「あー…腰いてえ」



濡れた髪をかきあげる姿が色っぽくて、胸が痛い程に締め付けられた。
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