いちごいちえ
薄く目を開けると、瑠衣斗の配合には丸い大きなお月様。
何だか見られているようで、それをぼんやりとした不思議な気持ちで眺めた。
体が堪らない程熱い。
でもそれは、頬に添えられた瑠衣斗の手も、同じように驚くほど熱い。
ここがどこかなんて、そんな事どうでもよくさせられる。
もっと瑠衣斗を感じたい。
深く、もっともっと深い所まで焼き付くように。
その時、突然聞こえてきた大きな音によって、意識を現実に戻されてしまった。
ハッとした私は、驚いた拍子に瑠衣斗の手から逃れ、胸をぐっと押す。
夢中になりすぎて、今の状況なんてすっかり頭から飛んでいた事に恥ずかしくなりながらも、慌てて瑠衣斗を止めようと抵抗する。
「るぅっ…だ、ダメだってばっ…」
必死に息継ぎしながらも、そう言う私の抵抗なんて簡単にかわされてしまう。
私の力なんて、瑠衣斗にかなう訳がない。
分かってはいるけれど、今はとにかくこの状況を何とか止めなければならない。
「ったく…なんだよ」
私の気持ちが通じたのか、瑠衣斗が溜め息を吐きながら離れていく。
少しムッとしたような表情をしているが、そんなものに流されてはダメ。絶対ダメ!!
私はそんな意志を表すように、負けないように瑠衣斗を見つめながら顔を横に振り、距離を取る…事は出来ないので、腕を突っぱねたままだ。
2人きりならまだしも、まさかこんな場所で止まれなくなっちゃうなんて…。
恥ずかしくて恥ずかしくて、顔は熱いまま真っ赤に違いない。
「ダメ…と、とにかく…今はダメだよ」
「…ふーん?「今は」ねえ?」
「!?」
お月様が、2人を見ている。
聞こえてきた大きな音は、太鼓の音だった。
空に響くように、その音は響き渡るように呑まれていく。
その中には、瑠衣斗の笑い声も溶け込んでいくようだった。