いちごいちえ




浴室内を占める湿度と温度に、響き渡る甘い呼吸。


ついさっきまでは、恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだったのに、今は瑠衣斗の事しか考えられない。


甘い痺れに、何もかもが頭から飛んでしまいそうだ。



「ももヤバい。少しは抵抗してくれないか?」



「…ん、るっ…あ」



瑠衣斗の声にうっすらと目を開けてみるが、すぐに甘い痺れに体が跳ねる。


一瞬見た熱っぽい瑠衣斗の瞳が、私を覗き込んでいた。


そんな表情に、私の気持ちはますます加速する。



「我慢できなくなる」



「あぁっ、も…ダメぇっ」




囁かれた言葉と共に、体がすっと浮いたように軽くなる。


頭が真っ白になったようで、何もかもが飛び、脳はその機能なんて果たしていないよいだ。



与えられた快感に、ようやく瑠衣斗から解放される。


ドキドキと鼓動する胸の音が、こめかみを伝って全身に響いている。




理性が飛ぶって…こーゆう事を言うのかな……。




ぼんやりとする頭で、ようやくそんな事を考えた。


ぐったりとした体に、気だるさが加わり、動く事さえ億劫だ。



「だから言っただろう?抵抗しろって。いじめたくなるから」



「…ドS……」



「最高の褒め言葉だな」




怒る気にも、恥ずかしがる気力もなく、最大限の嫌味を込めてポツリと呟く。


でもその言葉は、瑠衣斗にとっては本当に褒め言葉なのだろう。



やたら満足そうに微笑む瑠衣斗にすら、今は怒りすら湧いてこなかった。
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