いちごいちえ
「いや、でもヤバかったのはホント」
「…ふうん」
「おい、どうでもいいんだろう。その返事」
「うん…」
ぐったり力の抜けきった私を、笑いながら瑠衣斗は再び洗い出す。
優しく髪をシャワーで濡らし、シャンプーで丁寧に洗う。
結局やっぱり、意地悪されていただけだけど、初めの頃と違う事は、既に私から瑠衣斗を求めていると言う事。
自分が自分で、止められなくなってしまっているんだ。
瑠衣斗の長い指が髪を通る度に、髪の一本一本に神経が通ったように敏感になる。
この手が私に触れていたと思うと、胸がギュッと縮んだ。
「大人しいな。疲れたのか?」
「ううん…」
「そんなに良かったのか」
「なっ!?バカじゃないのー!?」
ますますパワーアップする瑠衣斗に、私が適う訳ない。
精一杯悪態をついてみても、瑠衣斗はクスクスと笑うだけなんだ。
時々軽くキスを落としてくれる瑠衣斗は、とても嬉しそうな表情を覗かせる。
少し前までは、こんな瑠衣斗を知らなかった。
そして、どんどん変わっていく自分に、私自身が驚いている。
人はこんなにも変わるんだ。
去年までの自分の心境が、これほどまでに変わるなんて。
「俺、こうやって風呂入るの初めてなんだけど、楽しいんだな」
「…えっ、初めて…?」
「え…うん…。そうだけど」
「初めて…なんだ」
「まさか、ももは初めてじゃないのか」
こうして私達は、一緒に成長し、発見し、かけがえのない物を得ていくんだ。