いちごいちえ
焦雲
結局、私は逆上せる程いじわるをされて、瑠衣斗は水を得た魚のように生き生きとし、根を上げた私に対して渋々と浴室から解放した。
思った以上に体力も消耗し、おかげさまで私はソファーに身を深く沈めている。
うーん…体がダルい……。
これも全部、瑠衣斗が無茶するからだ。
対照的に、瑠衣斗は飲み物を用意しながらも、やけにご機嫌だ。
「ご機嫌だね?」
「ん〜?おかげさまで」
何を言っても太刀打ちできないと分かってはいるけれど、負けっぱなしも性に合わない。
かと言って、パワーアップした瑠衣斗に、勝つ自信もない。
なおかつ、自分の身を自ら危険にさらすなんて、そんな捨て身な行為をするつもりなんてない。
コトンとテーブルに置かれたグラスから、視線を上げる。
ソファーに座らないまま、氷の浮かぶアイスコーヒーの入ったグラスに口を付けた瑠衣斗が、そんな私の視線に不思議そうな顔をする。
「……ん?」
「眠れなくならないの?」
「え?あぁ〜コレ?カフェインで寝れなくなるなんて迷信だよ」
そう言いながら、瑠衣斗が私の隣に腰を下ろす。
それを確認しながら、私も瑠衣斗が用意してくれたアイスコーヒーの入ったグラスを手に取った。
口を付けると、そっと中に流し込む。
広がる苦みに、ほっとする。
それと同時に、私はある事にハッとした。
「ね、るぅ。寝る前にカフェイン摂取しても寝れるって」
「うん」
「いつでもどこでも寝れちゃう、るぅだからじゃない?」
「……ハッ、そうか。って何だよそれ」
こんなくだらないやり取りさえも、今は楽しくて仕方ない。