いちごいちえ
私と瑠衣斗しか居ない、この空間。
ももちゃんが居るだけでも、だいぶ雰囲気は違った。
今更意識する事もないが、これからどうなるのだろう。なんて考えてしまう。
コトンとテーブルにグラスを置いた瑠衣斗が、首に掛けたままだったタオルで髪を無造作に拭く。
「……ん…?」
私の視線に気付いた瑠衣斗が、不思議そうに顔を覗かせる。
思わずじっと見つめてしまう程、髪の濡れた瑠衣斗がやけに妖艶に見えてしまう。
「…おい?な、なんだよ」
「……え…うん…」
「いや、だからどうしたんだよ」
ポカンと答える私に、瑠衣斗が苦笑いする。
くしゃっと笑った笑顔が、たまらなく可愛いなんて思った。
だから私は、
「るぅ可愛いなーって思って」
「可愛い…?」
「あ、色っぽいなーとも思った」
と、素直に答えてみた。
友達として見ていた時と、今とじゃ全然違う。
私、るぅが好きなんだ。
こんなにも大好きなんだ。
「俺は、どう反応すればいいんだ…?」
「るぅ、ちゃんと乾かさないと朝大変だよ」
「お…おぉ」
好きとは素直に言えなかったけれど、今はこれくらいが幸せ。
他愛もない話をして、一緒に過ごせる。
だから、これ以上の事があると思うと、やっぱり少し怖くなる。
気持ちが慣れてしまうんじゃないか、って。