いちごいちえ
「隠すなよ」
「だっ、だって、は…恥ずかし…」
「何を今更…顔以外もいろいろ見てんのに」
「ひ…いやあー!!!!お願い何も言わないでえーっ!!!!」
タオルで顔を覆ったまま、恥ずかしさにうずくまる。
顔が熱くて熱くて、絶対に頭から湯気が出ているに違いない。
頭上からは、瑠衣斗の笑う声が降ってきて、顔を上げる事もできないままだ。
「もも、髪拭けない」
「……るぅの変態…」
「ん?そうかもな。ももにだけだけど」
散々、人の心を翻弄しておいて、最後にはきちんと嬉しい言葉をくれる。
話のくだりは恥ずかしい内容だけれども、素直に嬉しいんだ。
私も相当、重症だよね……。
そっと目線だけで瑠衣斗の様子を伺ってみると、バッチリと絡まる視線。
すでに顔が熱かったはずなのに、更に熱くなる。
嬉しさ半分、恥ずかしさ半分。
なんとも偏りがたい気持ちのまま、思わず口をへの字に引き結ぶ。
柔らかく微笑んでいた瑠衣斗が、そんな私の表情を見て、一瞬目を見開いた後、クッと小さく吹き出した。
「人の顔見て笑ったでしょう」
「…いや、そ、そうだけど…違う」
私の問い掛けに、瑠衣斗が笑いを堪えながら口を開く。
何だか遊ばれているようで、さすがに少しむっとしてしまう。
「…怒るなよ。百面相か?いちいち可愛い顔するなよ」
そんな予想外な言葉に、今度こそ固まるようだった。