いちごいちえ
リビングの灯りが消え、寝室に瑠衣斗が私の後から入ってくる。
ドキドキしすぎて立ち尽くしている私を、瑠衣斗が手を引いてベッドへと促す。
「あ〜…どっと疲れた」
ひんやりと冷たいシーツの感触を感じながら、瑠衣斗のぐったりとした声が届いてきた。
そのまま促されるまますんなりとベッドに潜り込むと、そんな私を確認した瑠衣斗が、私に続くようにしてベッドへと入ってきた。
少しだけ疲れたような顔をする瑠衣斗に、私だけがドキドキとしているように思えてならない。
「電気、消すぞ?」
「…うん」
瑠衣斗が腕を伸ばし、ベッドの脇にあるリモコンに手を伸ばす。
ピッという音がしたかと思った瞬間には、辺り一面が真っ暗になる。
衣擦れの音が耳に届き、それがやたらと生々しく感じてしまう。
灯りも何もないものだから、瑠衣斗と言う存在をひしひしと感じた。
「…なあ、もも」
「えっ!?」
突然発せられた声に、可笑しな程反応する。
あぁもう…絶対変に思われた。
恥ずかしさに頭が沸騰しそうな感覚に、悶えそうになる。
でも、そんな中聞こえてきたものは、静かな瑠衣斗の声だった。
「…雨、やまねーな」
…え?…雨…?
ふっと顔を上げると、瑠衣斗が仰け反るようにして窓を見上げている。
そっと広げた窓からは、外からの微かな明かりが漏れてくる。
月なんて出ていないのに、部屋の中よりも外が明るい。
淡い光が、そんな瑠衣斗をぼんやりと象る。
妖艶なその輪郭に、息が止まる程見惚れてしまった。