いちごいちえ
灯火
大きな太鼓の音に合わせて、円を囲んだ人達が盆踊りを踊る。
そんな景色を見ながら、何だか穏やかな気分に胸が暖かくなる。
たくさんの家族連れから、お年寄り、小学生の集団からちょっと怖そうな若い人達の集団。
いろんな人達がこうして集まり、みんなでお祭りを楽しむ姿は、私の気持ちも浮き足立たせるには十分だった。
「るぅなんか食べる?」
「そうだなあ。たこ焼きほとんど食われたしなあ」
嫌みのような小言でも、そんな瑠衣斗が笑って言うから私も笑ってしまう。
繋いだ手と手が何だかくすぐったい。
浴衣のせいで、小幅でしか歩けない私に、ゆっくりと歩いてくれる瑠衣斗に嬉しさが膨れ上がってしまう。
些細な事も、なんだか何十倍にも幸せになってしまって、なんだか魔法のようだ。
そんな中、前方からひときわ賑やかな集団が迫ってきて、思わず目を向けた。
瑠衣斗もそれに気付いたように目を向けると、一瞬にして顔を渋らせた。
「おぉ〜っ!!瑠衣じゃん!!ももちゃんも!!」
「チッ…一番会いたくねえ奴に会っちまった……」
軽く舌打ちすると、怪訝そうな顔をしてその人物を睨み付ける。
心底嫌そうな瑠衣斗に対して、私は苦笑いを浮かべる事しかできなかった。
「んだよ。俺にも笑って見せろよ」
「気持ちわりー。お前俺に笑って欲しいのか」
「げえ。気持ちわりーな!!」
2人の感覚はよく分からないけども、やっぱりよく分からなかったけども、大輔さんが笑うからいつも通りなのだと思った。
迷惑そうな顔をしながらも、どこか楽しんでいるような口振りの瑠衣斗に、やっぱり幼なじみ?喧嘩仲間だなあ。なんて感心したのだった。