いちごいちえ
鳴り止まない雨音だけが、この部屋に届いてくる。
外を眺めていた瑠衣斗が、ゆっくりと私に視線を向け、ふわりと笑う。
優しすぎる眼差しに、胸がギュッと熱くなる。
瞬きをするのも惜しいくらい、その顔を見ていたいと思った。
カーテンから離れた瑠衣斗の手が、そっと私の頬に触れる。
少しだけ開いたままになってしまったカーテンの隙間からは、外の明かりが漏れる。
それがスポットライトのように、瑠衣斗を後方から照らし出す。
「そんな顔で見るな」
ポツリと呟かれた言葉に、思わず首を傾げる。
「そんな顔?って…?」
私の言葉に、体勢を変えた瑠衣斗と向き合う形になる。
私の頬を包み込み、瑠衣斗がおでこをくっつける。
間近に迫るその瞳に、吸い込まれるようだ。
「そんな顔。写り込んでるだろう?」
瑠衣斗の言葉に、思わず私は笑ってしまう。
何を言い出すかと思えば……。
「近すぎて分かんないよ」
「…そうか」
クスクスと笑う私に、瑠衣斗が目を細めて笑う。
じゃれ合っているようで、なんだかくすぐったくて愛おしい。
笑う私を、瑠衣斗が抱き寄せると、ぎゅっと力が加わる。
暖かい温もりが体中に広がり、思わず顔を綻ばせた。
安心感に包まれ、そっと目を閉じる。
瑠衣斗の背中に手を回すと、ギュッと力を込めた。
「……ヤバいだろう」
「え?や、ヤバい?」
耳元で囁かれた落ち着けない言葉に、ぱちりと目を開ける。
今までの穏やかな気持ちとは反対に、なんだかそわそわしずにはいられなかった。
「やっぱり…反則だ」
一瞬の出来事に、頭が付いていかない。
言葉の意味を理解する前に、私の唇は瑠衣斗によって塞がれていた。