いちごいちえ




「マジで余裕なさすぎだな、俺」



「え…?」



胸に当てられていた手を、瑠衣斗が更に持ち上げる。



手を重ねられたまま、瑠衣斗の頬にそっと触れた。


それだけで、愛おしさに胸がいっぱいになり、苦しくなる。


私を見下ろす瑠衣斗から、目が離せない。



吸い込まれそうな瞳が、柔らかく緩む。


そっと近付いてくると、導かれるように私は目を閉じた。



優しく重ねられる唇から、微かなお互いの息遣いが漏れる。



灯がともるように、体の奥が熱い。


対して、全身で感じる瑠衣斗の重みは、驚くほど熱かった。



「あっ…ん」




「……もも」




溜め息のように吐き出された私の名前に、うっすらと目を開ける。



いつも私に悪戯をするような瑠衣斗では無く、余裕なく私に触れる。


ただひたすらに、私を求めてくれている事が、全身から伝わる。



頬、首筋、胸元へと、順に唇が触れていく。



ふと体を起こした瑠衣斗が、邪魔そうに上着を脱ぎ去ると、艶やかな肌が月明かりに青白く浮かび上がる。



そのまま再び覆い被さってくると、私の着ていた服を不器用に脱がにかかる。


だが、指がもつれるようで、なかなかうまくいかないようだ。



そんな様子が珍しく感じ、思わず頬を緩めた。



「…あ〜…格好悪いな。マジで余裕ねえじゃん、俺」



ポツリと呟かれた言葉に、思わずクスリと笑う。


そんな私を、瑠衣斗が迫力のない赤い顔で睨んだ。
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