いちごいちえ
「すげえ事なってんぞ。お前とももちゃん」
楽しくて仕方ない。と言うような大輔さんと、その仲間たち。
何がどうすごい事になってるかなんて、予想もつかない。
間違いなく、私にとっては楽しくて仕方ない事ではないに違いないのだろうけれど。
赤くなるだけで何も言えない私は、瑠衣斗の顔を見る事も、顔を上げる事すらできずにいた。
恥ずかしさでどうしようもできず、ただ俯くしかできなかった。
「おい。どーゆう事だ」
「あ?そのまんまだけど」
いつもより低い声に、瑠衣斗が怒っているんだと簡単に予想がつく。
そっと伺うように視線を上げたら、きっちりと眉間に皺を寄せた瑠衣斗が目に入った。
あぁぁ…やっぱり怒ってるよ。。
私から何か言葉を掛ける事もできず、気まずさに唇を噛み締めた。
「調教師って、なんだよ」
「…は?」
「調教師って、なんだって言ってんの」
え…?そこ?
まさか…まさかるぅ……。
まさかそんな所で躓いてたなんて……。
「いや…そこ?そこ重要視するか?」
「だから調教師ってなんだっつってんだよ」
「…別にそこは気にしなくていんじゃねえ?」
チラリと私に目を向けた大輔さんが、苦笑いして私に視線を送る。
多分、私の表情もきっと、苦笑いのような呆れた顔をしているのだろうか。
素直な瑠衣斗なんだけれども、私には素直すぎて分からない瑠衣斗だった。