いちごいちえ
「ま、とりあえず。次に瑠衣が帰ってきた頃には、…ふふ」
「……なんだよ、気色わりぃな」
「お、余裕だなあ」
「…うっせーよ」
笑い続ける周りの人達とは対照的に、瑠衣斗はすっかり不機嫌そうだ。
調教師…と言うキーワードよりも、もう一つのキーワードを意識してしまい、私は言葉を発する以前に固まるしかない。
次にるぅが地元に来た頃には、どうなってんだろう……。
私はるぅと、一緒に居れるのかな?ずっとこのままだよね?
ずっと握られている手に、ぎゅっと力を込めた。
何だか胸がキュンとして、息苦しいんだ。
今一緒に居るのに、先の事を考えてしまうと不安で怖くなってしまう。
まだ何かみんなと話していた瑠衣斗が、手を握りしめた私に気付いたように目を向ける。
見上げた瑠衣斗を私は、やっぱり好きだなぁ、と実感するんだ。
「ん?」
優しく微笑みかけてくれる瑠衣斗が、私の手を握り返す。
そんな表情が堪らなく私を切なくさせるって、るぅは気付いてるのかな?
「おい〜見せ付けんなよー!!」
「お前は帰れ!!ほっといてくれ!!」
そんなやり取りに、終始私は苦笑いするだけで、周りも瑠衣斗をからかって笑っていた。
何を言われても、絶対に手を離さないでいる瑠衣斗の手を、ぎゅっと握りしめた。