いちごいちえ
「あ、そう言えば瑠衣達明日帰るんだって?」
仲間内の1人が、そう言って話題を変える。
何だかちょっと寂しくなる内容に、私は話に耳を傾ける。
明日には帰るんだと思うと、言葉にできない感情が溢れてしまいそうだ。
1人ぼっちじゃないはずなのに、1人ぼっちになってしまうんじゃないかと言う不安。
瑠衣斗を信じていない訳ではないのに、何だか胸騒ぎがしてしまうんだ。
「うん、そうだな。その予定」
「つまんねー。からかう相手が居なくなっちまうな」
「逆に瑠衣んちに居候しに行くか」
勝手に進む会話には、もちろん瑠衣斗は不機嫌さを隠す事なくみんなを睨みつける。
ただ瑠衣斗を煽ってからかっているだけだと私にすら分かるのに、気付かないのは瑠衣斗本人だけなのかもしれない。
お祭り独特の雰囲気が、みんなの気持ちをオープンにする。
きっと瑠衣斗の学生の頃も、こんやってみんなと会話してたのかなと思うと、しっかりと目に焼き付けておきたいと思う。
「お前らの寝る場所はねえ」
「寝室はももちゃん限定〜ってか!!」
「う、うるせえ!!」
「ぎゃははは!!図星かよ!!」
今度こそ茹で蛸のようになるしかない私は、恥ずかしさに倒れそうなほどの衝撃を受けた。
「もういい。行くぞもも」
「え?あっ」
グッと手を引かれて、突然の事によろめきながら足を踏み出す。
荒々しい足取りの瑠衣斗に引っ張られながら、背後からは大きな笑い声が聞こえた。
「またな!!」
そんな大輔さんの声は、心なしかすごく優しいものだった。