いちごいちえ
「ね、るぅ?良かったの?」
私の言葉に鋭い視線を向けるが、すぐにそれをそらしてしまう。
「…勘弁してくれ」
溜め息と共に吐き出された言葉に、思わず苦笑いしてしまうしかない。
少しだけ照れくさそうに頬を赤らめた様子が、なんとも可愛らしく思えた。
しばらく屋台をぐるぐると周るが、瑠衣斗が大輔さん達と再び鉢合わせになる事を避けるようにし、周りを警戒する様子に何度も吹き出した。
そのたびにムスッとするもんだから、私は笑いを堪える事を必死こらえた。
「るいー!!ももー!!」
ハッとするように、声のした方へと顔を向けると、隼人君が前から駆け寄ってきている所だ。
嬉しそうに満面の笑みを浮かべながら、弾丸のように走ってくる姿に、私の頬は余裕で綻ぶ。
甚平に身を包んだ隼人君は、紺に金魚の柄と言う可愛らしい姿で、頭にはヒーローのお面を付けている。
「見つけたあ!!!!」
「はは、見つかっちまった」
ぎゅっと瑠衣斗の足元にしがみつくと、クリクリの目で瑠衣斗を見上げる。
そのままの目で、私を見上げる姿に、胸がきゅうんとしてしまう。
瑠衣斗が大きな手のひらで頭を撫でると、頬をすり寄せるようにして甘える姿に、抱き締めたくなる衝動に駆られた。
「ちょっと隼人、迷子になっちゃうでしょ?」
「だって、るいとももみつけたんだもん!!」
後を追うように由良さんと祐二さんが駆けてきて、2人は追い付くと大きく息を吐いた。
どうやら、走って追い掛けてきたようだ。
「はーくんわたがしほしいー!!」
そう言って私の手を握った隼人君が、ぐいぐいと手を引いた。