いちごいちえ
顔は瑠衣斗に向けられているのに、私を連れて行こうとする隼人君に、対抗するように瑠衣斗まで手を引く。
おかげで私は、隼人君に引っ張られ、反対側から瑠衣斗に引っ張られと、なんとも可笑しな状態にから笑いするしかなかった。
「綿菓子は分かった。でも、ももは連れてくなよ」
「ももと一緒にたべるの!!」
そんなやり取りを両側でされながら、私の足取りは勝手に進む。
助けを求めようにも、それすら叶わない状態になすがままだ。
「瑠衣〜、私焼きそば食べたい」
「あ、俺も」
それどころか、由良さんと祐二さんまで便乗してしまい、誰も私を助ける気はなさそうなので、私はそれに従うしかなかった。
テントの張られた場所で、みんなでご飯となった。
約束通り、隼人君に綿菓子を買うと、みんなでテントと屋台と併設している場所で、焼きそばや串カツを注文し、席について景色を眺めるようにして焼きそばを食べた。
瑠衣斗はなんだかぶつぶつと言っていたが、そんな様子にみんなが笑うので、一際賑やかな食事だった。
「で、やっぱり明日帰るの?」
「その予定」
由良さんの言葉に、瑠衣斗が短く返事をする。
ずっと居れる訳ないのに、やっぱり寂しくなる。
隣に座る隼人君を見ていると、どうしても離れがたい気持ちになっちゃうんだ。
私の視線に気付いた隼人君が、不思議そうな瞳で私を見上げると、食べようとしていた串カツを私に向けて差し出した。
「ももたべたい?あーんして」
小さな優しさに、余計に寂しく感じてしまうのは、私のワガママなのかもしれない。