いちごいちえ
透月
太陽は傾き、空を紅く染める。
透明に白く浮き上がっていた月が、迫る闇にぼんやりと丸い弧を描く。
街全体が、なんだか浮き足立っている気がして、なんだかそわそわしてしまう。
「これを…こうして…っと、ほっ!!できたあー!!」
腰回りを固定されたように、お腹には圧迫感。
むやみやたらと動いてしまったらいけないと思い、グイグイと引っ張られながらも踏ん張った。
見下ろすと、いつもよりちょっと太めの自分の胴体。
そして、鮮やかな彩りの柄。
初めて目にした時、あまりの綺麗さ?かわいさ?に、現金にも胸がキュンとしてしまった。
「できたよももちゃん♪ほら、姿見で見てごらん」
「あ、ありがとうございます…」
なんだかドキドキしちゃって、頬が不自然に硬くなる。
「うわぁ…」
「ちょっと〜、本当にモデルさんみたい!!あいつの鼻の下が延びきったデレデレした顔が想像できるわ」
「デレデレ…ですか」
髪もアップにしてもらい、髪飾りの花なんかが飾られている。
白地に赤紫の花が、咲き誇るように描かれた浴衣に、ピンクと水色のグラデーションの兵児帯。
帯締めは、かわいらしい硝子でできた飾りが、キラキラと光を反射していた。
着付けをしている間、由良さんは美容師の免許を持っていると言う事を知った。
他にも調理師免許まで持っていたりと、まさに手に職を持ったできる女って言う感想だ。
「瑠衣、本当に変わったんだよ」
「え…?るぅですか?」
私の言葉に対して、ふわりと笑った由良さんは、何か懐かしむような目で私を見つめていた。