いちごいちえ
まだ隠れん坊をすると言う隼人君を宥めながら、結局みんなとお祭りを楽しんだ。
隼人君に私がどこかへ連れてかれそうになると、対抗するように瑠衣斗が焼き餅を妬く姿に、由良さんも祐二さんも笑った。
ちょくちょくと掛けられる沢山の声に、瑠衣斗が返事をするたびに私は赤くなり、そんな私に対して隼人君が熱があると心配し、更に赤くなるのを繰り返す。
楽しい時間は本当にあっという間で、永遠に続けばと願うのは私だけなのだろうか。
まるで夢から覚めてしまうようで、現実に戻るのが嫌で堪らない。
そんな意識の中、突然周りの喧騒を打ち割るような大きな音に、顔を跳ね上げた。
「お、始まったな〜」
「パパだっこ!!だっこ!!」
夜空に広がる、大輪の花。
周りを明るくする程大きな打ち上げ花火が、鮮やかに空を彩る。
これが終われば、お祭りも終わりだと思うと、なんだか花火のように一瞬の鮮やかさが切なく感じる。
こうして花火を見るのも、一体どれくらいぶりなんだろう。
最後に見たのは……もう、覚えてないや。
そっと隣を見上げると、光を受けた瑠衣斗の横顔に、何故か距離を感じてしまう。
こんなに近くに居るのに、瑠衣斗はどこか遠くを見ているようで、切なくなる。
私はちゃんと、瑠衣斗のそばに居れるのだろうか。
握りしめた温もりは確かな物なのに、その存在は掴んでいなきゃすぐに無くなってしまいそうで。
色素の薄い瞳に、キラキラと光が写り込む。
瑠衣斗の瞳に写り込む花火があまりにも綺麗で、いつの間にか見とれてしまう程だった。