いちごいちえ
「明日、顔出してきなさいよ!!じゃあねー!!」
賑やかな沢山の声の中、一際とおる大きな声て由良さんが手を振る。
祐二さんに肩車された隼人君が、両手を大きく振りながら、楽しそうな笑顔で何かを叫んでいる。
「分かってるよ」
瑠衣斗は手を振りながら、多分聞こえていないであろう、同じように手を振っていた私に届いた瑠衣斗の声に、由良さんと祐二さん、隼人君が笑顔で手を振りながら背中を向けた。
仲良く並んで歩く後ろ姿を目に焼き付けるかのように、私は目がそらせない。
祭りの後の寂しさなのか、それとも別の何かなのか。
理由は分からないけれど、なんだか目頭が熱くなった気がした。
人混みに紛れるように、その姿が見えなくなると、瑠衣斗が私の目の前いっぱいに現れ、思わず驚いた私は目を見開く。
「な…なに?」
「…寂しいのか?」
ふっと微笑んだ瑠衣斗が、優しい瞳で私を覗き込む。
なんて声を出せばいいのかも分からずに、言葉が口から出てこない。
そんな私を見つめたままだった瑠衣斗が、クスっと笑うと顔を離した。
「どうしたら、ももが寂しくならないかな?」
「…え?」
私が見上げると、瑠衣斗は笑顔のまま私を見下ろしていた。
なんで、るぅは………
「私が寂しいって思ってるって…思うの?」
心の中を、読まれているような感覚。でもそれは、決して嫌なものじゃない。
多分それは、瑠衣斗だから。
瑠衣斗が私を、見ていてくれてるって、分かるから。
「顔に書いてある。てゆーか、ももがサトラレ?だから」
そう言ってぎゅっと手を握りしめた瑠衣斗が、私を導くようにそのままゆっくりと歩き出した。