いちごいちえ
「そんな事、わざわざ言われたくないわよ!!」
りなさんは自分の感情を、どこにどうぶつけたらいいのか分からない。そんな感じだ。
なんだか羨ましいな…なんて思う私は、やっぱりどこかおかしいのかもしれない。
こんなにも気持ちをぶつけられるなんて、私には考えられなかったから。
本心を言葉にする事が、私には怖くてたまらなかったんだ。
私を見ているようで、見ていないようで。
だから受け止めてもらえない。って、そう思ってた。
弱い所を見せたら、みんな敵になるんじゃないかって。
お前なんかいらない。って、そう言われちゃうんじゃないかって。
だから、私は気持ちを飲み込んだの。感情を殺した。意志は持たなかった。
泣き方すら、忘れてしまったの。
「りな…ずっと、ずっと…るいが…るいが好きだったんだもん」
涙はこんなにも綺麗なんだ。
人を想い溢れる涙は、その人の気持ちが形になったモノなのかもしれない。
だから、こんなにも私の心を揺する。
「ずっと…昔から、るいが…好きだったんだもん…」
2人の関係は、やっぱり私には分からない。
でも、今瑠衣斗の隣に居るのは私。
余裕なんて、ある訳がない。むしろ、怖くて怖くて堪らない。
でも、人を好きだと思う気持ちは、私にも痛い程分かるから。
それを教えてくれたのは、紛れもなく……―――りなさんだから。
「るぅ…お願い。きちんと話をしてきて?」
どう転ぶかなんて、分からない。ひょっとしたら…って言う気持ちすら、私にはあるから怖い。
「もも…」
でも、人を好きになる事は、奇跡みたいなモノだから。
私には、人の気持ちを無視する権利も、奪う権利もないのだから。
「…分かった」