いちごいちえ




今日はお祭り。


瑠衣斗の実家である一室を借りて、由良さんに浴衣を着付けしてもらったばかりだ。



私の様子に満足したように、由良さんが「ふふふ♪」なんて機嫌よく笑う。



パッと花が咲くような笑い方に、思わず見とれてしまう。



「あの子ねえ〜、見かけクールって言うか、シャイって言うか、口数が少ないでしょう?」



テキパキと手を止める事なく、後片付けをしながらも口を動かす様子は、なんとも手慣れている。


手伝いたいけども、要領の分からない私は手を出さない方が無難なのかもしれない。



「感情をむやみに表に出さないと言うか…姉弟でも、たまに頭にくるぐらい冷静って言うの?」



由良さんはクスクスと笑いながら言うが、私はそんな話に納得できてしまう。


私にはよく分からない瑠衣斗が、みんなから見れば良く分かるらしい瑠衣斗。


でもそれは、当の本人の私が分からなかっただけで、周りから見れば良く分かってしまうと言うだけだった。



瑠衣斗は私に対して、気持ちをひた隠しにしていたから。



「でも本当はすごく繊細なんだよね。寂しがり屋だし、甘えん坊だし。ただ感情の表し方が、分からなくなっちゃっただけなのかもね?」



その言葉は、まるで私の事を言っているようで、物凄くその気持ちがよく分かった。



でも、どっちかって言うと、るぅって物凄く感情に素直と言うか…。


……私には遠慮ない気がする。


遠慮じゃないな。情け容赦ないだ。


「そんな瑠衣が、こんなに変わるとはね〜♪」



「…は、はい…?」



こんなに変わる…?


それは…どう言う意味だろう。



「隼人に対抗意識燃やすなんて。大人気ないにも程があるよね!!」



そう言って笑い出してしまった由良さんに対して、私は赤くなって俯くしかなかった。



うう…確かに…。



私は余計な事を思い出しては、そのたびに恥ずかしさで真っ赤になるしかなかった。
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