いちごいちえ
「ただいま」
瑠衣斗が笑う気配がして、優しい声がして、その表情をきちんと見たくて。
気が付くと軽々と膝に乗せられて、逃げられないようにしっかりと腰に腕が回されている。
よくやく視界がハッキリとしてきたのは、瑠衣斗が私の瞼と涙に口付けたからだった。
「おか…えり…」
どうしてここが分かったの?
どうして私、るぅの膝の上に居るの?
どうしてそんなに優しいの?
どうしてここに居るの?
どうしてこんなにも…るぅが好きなの?るぅじゃなきゃダメなの?
「だからなんでももが泣いてるんだ」
聞きたい事がいっぱいあるはずだった。
言いたい事、伝えたい事も、いっぱいあるはずだった。
なのに……――
――……どうしてるぅは、…私なの?
「ももじゃなきゃ、俺はダメだから」
私の口から無意識に出た言葉は、そんな一言だけだった。
「ももがももだから、俺は好きなんだ」
「………」
「ももじゃなきゃダメなんだ」
「………」
「もも以外ダメなんだ」
「る……」
「ももが居ないと、ダメなんだ」
「…る…う…」
「ももの傍に、ずっと居たいんだ…ずっと」
どうしてこんなに、欲しい言葉をたくさんくれるの?
私、贅沢になっちゃうよ。
「頼むから。離れるなんて、一瞬でも考えないでくれ」
多分もう、手遅れだけど…ね?