いちごいちえ
瞑想
すっかり力の抜けきった私は、瑠衣斗に抱き抱えるられるようにして頬を瑠衣斗の胸に押し付けていた。
川の流れはサラサラと奏で、私の中の過ぎ去った激情を、解していくようだ。
「また居なくなったかと思った」
また…居なくなる?
それが何の事を指しているのか気付いた私は、思わず唇をきつく結んだ。
「ごめん」
「……。」
何も言えないままの私を、瑠衣斗がきつく抱き締める。
頭には瑠衣斗の顎先が乗せられ、まるで逃げられないようにしっかりと押さえつけられているようだ。
ハッキリと何に対して謝っているのか気付いた私は、それでもやっぱり声が出せない。
今でも思い出す事すら怖くて堪らなく、傷付いてないと言えば嘘になる。
でも私は、りなさんを責めるなんて、できるはずがない。
愛情にはいろいろな形があるから。人それぞれ、表現の仕方だって様々だ。
だからこそ私は、りなさんを責めるなんてできないし、逆に切なくもなってしまうから。
「あいつ、幼なじみなんだ」
「え?幼なじみなの?」
「そう」
ようやくハッキリとした2人の関係に、複雑な心境になる。
長いであろう2人の歴史に、嫉妬が入り混じってしまう。
「中学まで一緒で、高校で俺が地元離れるまでずっと一緒だった」
初めて知った事実に、私はただじっと瑠衣斗の言葉を胸に響いてくる声で聞いた。
そんな中、一つの不安が生まれ、それが胸の中を占めていく。
「ずっと会ってなかったんだ。でも、大学通うためにあいつが向こうに出てきて…俺に会うために」
やっぱり私には、りなさんを責める事なんてできない。