いちごいちえ
「あいつの気持ちは知ってたんだ…でも、ハッキリ言わなかった俺が悪いんだ」
言葉にしてしまえば、真実を知ってしまうだろう。
瑠衣斗は包み隠さず、私に全てを話してくれるだろうから。
でも、その真実を知る事が怖くて何も聞けない自分は、卑怯で逃げてるだけなんだ。
「そのせいで、俺のせいでももを巻き込んだんだ。美春も」
1人でごちゃごちゃ考えていても、真実なんて結局こんな簡単なものだ。
それを知る勇気がなくて、1人で無駄な自問自答を繰り返す。
だから私は、いつも気付くのが遅すぎる。そのせいで、しなくてもいい後悔をするんだ。
「ごめんな。俺のせいなんだ」
そして、こうやって私は、また後悔する。
でも、もう繰り返したくない。
思ってるだけじゃ、何も伝わらないから。
「るぅは…すき…だったの?」
「え?」
「りなさん…好きだった?」
腕の力が抜いた瑠衣斗を、ゆっくりと見上げる。
その表情からは、少し驚いたような、戸惑ったような、なんとも言えないような表情をした瑠衣斗と目があった。
「…付き合ってたの?」
目はそらせなかった。瑠衣斗の瞳があまりにも綺麗で、その瞳に写り込む月明かりが、揺れているようにも感じた。
「いや…俺は……利用したんだ」
胸の奥が、スッと冷たくなった。
全身の血の気が失せるように、指先が冷たい。
ふっと笑った笑顔からは、痛々しい程に自嘲的で、瑠衣斗が泣いているようにも見えた。
「弟が死んで、何もかもがどうでも良くなって。あいつの気持ちを利用したんだ」
「るぅ…」
「でも、結局気持ちには応えれなくて。言い訳かもしんねえけど……なにもできなかったんだ」
苦しい程、胸がズキズキとする。息をするのも億劫で、浅い呼吸を繰り返した。
「全部受け止めたいって言うあいつの気持ちに、俺は結局、冷たく当たるしかできなかった」