いちごいちえ
「体の関係なんて、持とうと思えば簡単だった。でも、そんな簡単に手は出せなかった」
「…うん」
「多分…幼なじみとして、大切だったんだ。好きの形は違うけど。俺の気持ち全てを見せたいと思わなかったんだ」
やっぱり切ないし苦しいけれど、やっぱり瑠衣斗は瑠衣斗だなって思えた。
瑠衣斗が過去に、どんな恋愛をして、どんな子と付き合ってきたかなんて分からない。
でもきっと…、きっと大切にしたんだろうと思う。
それは、自分の周りに居る人たちに共通する事で、瑠衣斗は利用したと言うけれど、なんだか違う気もした。
言葉では説明できないけれど、大切に思うからこそ、関係を変える事なんてできなかったのだろう。
私にも、その気持ちが少しは分かるから。
自分の気持ちを全て見せる事は、相手まで苦しめてしまいそうで怖いから。
依存してしまう事が、何よりもイヤだから。
「それに…置いてく事にもなるし。縛り付けるつもりもなかった。だから、誰とも付き合うつもりもなかった。高校行ってももちろん恋なんてするつもりもなかった」
「…うん」
「でも……、」
「……るぅ?」
言葉が続かなくなった事を不思議に思い、じっと瑠衣斗を見つめた。
眩しそうに目を細めて、瑠衣斗が優しく私の頬を撫でる。
その手つきがあまりにも優しくて、何時の間にか入っていた肩の力をゆっくりと抜いた。
「でも、一瞬で……ももに恋したんだ」
「…え?」
「あっという間だったよ。さらってったんだ。俺の決意と一緒に」
自分でも分かるぐらい、大きく目を見開いた。
胸がじんわりとして、ぽっと暖かくなった。