いちごいちえ
「恋愛とか、どうでも良かったんだ。ただ俺が、久斗の夢を代わりに叶えたくて。ただの自己満足なんだけどな?」
以前聞いた話と、なんら変わりのないような内容。
でもそこには、瑠衣斗の思いが含まれていて、やっぱり私はますます瑠衣斗から離れられなくなる。
「すんげ不純な動機だし、だからこそ久斗に申し訳なくて。何のためにここまで来たんだって。だから何度も諦めようとした」
瑠衣斗は瑠衣斗なりに、いろいろ考えて悩んで、ずっとそばに居てくれたんだ。
そんな事も知らないで、私は甘えてばかりいたんだ。
「たまに地元帰っても、ほとんど誰とも会わなかった。もちろん、アイツも」
勝手な予想ではあるけども、きっと瑠衣斗は久斗君に会いに帰っていたのだろう。
知り合いや友達と過ごすなら、もっと長く居たっておかしくもない。
でもそれをしなかったのは、りなさんの事もあるからなのだろう。
「高校出て、大学行くようになって…それから再会したんだ。でもアイツの気持ちは変わってなくて」
突然大学まで押し掛けてきたりなさんを、今でも鮮明に思い出せる。
胸がズキズキ痛むけど、私は何も言わずに、ただ瑠衣斗の言葉に耳を傾ける。
自然と力の入っていた私の手に、瑠衣斗がそっと手を重ねる。
いつの間にか冷たくなっていた指先に、瑠衣斗の温もりから気持ちが染み込んでくるようだ。
「ハッキリ断らなかった俺が悪いんだ。アイツの気持ちに甘えて、振り切る事をしなかったんだ」
それはきっと、違う。
るぅは振り切れなかったんだ。
「それで、俺のせいでももは傷付いたんだ。アイツがももにした事は、全部俺のせいなんだ」
私は、なんて言えばいいのだろう。
傷付いた事は事実だ。でも、誰が悪いかなんて、私には分からないし、いないような気がした。
私からもっと早く切り出していれば、違う結果もあったはずなのに。
私は逃げてばかりで、自分を守る事に必死だったんだ。