いちごいちえ
「…俺、さ…」
「うん」
「すげえ卑怯な男なんだよ。だから、ももに嫌われんじゃねえかって、だからずっと怖くて言えなかった」
瑠衣斗の腕の中は、温かくて気持ちが良くて、すごく落ち着く。
私に嫌われる事を、何よりも怖い瑠衣斗。
私が瑠衣斗の立場なら、きっと同じ事を思うだろう。
「…アイツとちゃんと話した。もっと早く言えって怒られたけど。でも、キッカケをくれたのはももなんだ。ありがとうな」
「…ううん」
「これからは、幼なじみとして俺を見れるように、頑張るってさ」
「そっか」
私が知らない、2人の歴史。
適うわけないのに、嫉妬なんかしてしまう自分にうんざりしてしまう。
でも、その過去があるからこそ、今の瑠衣斗が居るんだ。
頭では分かっているのに、変な嫉妬は消えてくれない。
「嫌な思いばっかさせて、俺ダメだな」
「本当にね」
「………嫌いになった?」
こんな弱気な瑠衣斗、瑠衣斗らしくない。
でも、全部含めて、これが瑠衣斗なんだ。
「嫉妬しすぎて変になりそう。……そのくらい好き」
「………。」
「いっそのこと、嫌いになれたらいいのに」
嫌いになるどころか、ますます瑠衣斗を好きになってしまう。
どれだけ瑠衣斗を好きになり続ければ、私は気持ちに余裕ができるのだろうか。
「私、独占欲が強いみたい」
苦笑いを隠しきれないまま、私は瑠衣斗の胸に顔を埋めた。