いちごいちえ




「…ごめんな」



優しく髪を撫でてくれる大きな手が、心地良い。


瑠衣斗の優しい声が、私の胸を震わせるようだ。



「ももに嫌われても、離すつもりないから」



「…うん」



「独占欲は、間違いなく俺の方が強いと思うけどな」




瑠衣斗の甘くて爽やかな香りが、私を包み込む。


川のせせらぎに耳を傾けると、気持ちが穏やかになる。


私はこの手を、絶対に離したくはない。


瑠衣斗を嫌いになる日がくるなんて、予想もつかない。



「やばいな〜。俺、どんどんももを好きになってく」



「え?」



「永遠に、ももを好きになり続けるんじゃねえかな。俺」




そんな事に、顔を上げた。


見下ろすように私を見つめる瑠衣斗の顔は、月明かりに照らされて優しく微笑んでいる。


こんなにも優しい顔をする瑠衣斗に、何故だか涙が出そうになった。


私だけに向けられる瑠衣斗の瞳には、しっかりと私を写してくれていて、それだけで胸が喜びでいっぱいになるんだ。



頬を優しく大きな手で撫でて、顎に添えられたのを合図に、私はゆっくりと目を閉じる。


羽根が触れたように優しく落とされる唇に、胸がギュッと鷲掴みされたように縮む。



「好きすぎてやべえ。どうしたらいい?」



唇を離さないまま、瑠衣斗が呟く。


顔が熱くなって、その熱が瑠衣斗にバレるんじゃないかと恥ずかしくなる。


私が何を答える前に、再び奪われる唇。


伝えたい事も、言いたい事も、いっぱいある。


それが全部、唇から伝わるようにと、私は瑠衣斗から与えられるキスを受け止めた。
< 49 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop