いちごいちえ
瑠衣斗の瞳に、涙で濡れた睫毛を揺らす自分が写り込む。
頬に流れた涙は、瑠衣斗の大きな手のひらで拭われて、涙の跡はもうない。
瑠衣斗に私は、どう写ってる?
何度思っただろう。
瑠衣斗の中に入り込んで、その目で私を見たら、瑠衣斗の気持ちが全部分かるんじゃないかって。
そしてそのまま、離れられなくなっちゃえばいいのにって。
ピッタリくっついてしまえば、瑠衣斗を失う恐怖なんて、なくなってしまうのに。
「だから、離せって言っても無駄だぞ。やっと手に入れたんだ。最後まで付き合ってもらうからな」
あぁ、もう。
どうしたら瑠衣斗を好きな気持ち、うまく伝わるかな?
普段なら口下手で口数も少ないるぅが、こんなにもたくさんの言葉を私にくれる。
私もいろいろ伝えたいのに、うまく言葉が出てこない。
「もっかい聞くけど、返事は?返事によってはさっきよりも…」
「は、はいぃっ!!離れるなんて思わないし、離れたくないもん!!」
優しい笑顔で物騒な事を言い出すもんだから、私は慌てて言葉を吐き出した。
一瞬目を丸めた瑠衣斗が、ぷっと吹き出す。
それを合図に、瑠衣斗が苦しそうに笑い出してしまった。
「な、なんっ…なんで笑うのっ」
そんな私の言葉に返事はなく、八重歯を覗かせた瑠衣斗は笑い続ける。
「ぶっ…くくっ、必死……すぎっ」
「だっ…!!」
だってそれはるぅが!!
意地悪するからでしょう!!
赤くなるしかない私は、悔しさで精一杯睨みつけてみる。
でもきっと、真っ赤で迫力もなにも無いだろう。
ひとしきり笑った瑠衣斗が、ようやく息を整えて私を見つめる。
その表情からは、笑いすぎたせいか少し疲れを感じた。
「はぁ〜……可愛すぎ」
そう言ってニッコリ笑った瑠衣斗に、悔しさなんて吹っ飛んじゃうんだ。