いちごいちえ




不貞腐れる私をよそに、瑠衣斗はすっかりご機嫌だ。


瑠衣斗は私の着崩れする浴衣を直してくれると、軽く触れるだけのキスを落としていった。



「そろそろ帰ろう。今日は疲れただろう?」



しっかりと頷いた私を確認すると、瑠衣斗は私に手を借しながら立たせてくれて、私は地面に足を着ける。


立ち上がったのは良いが、なんだか足に力が入らなくて、思わずふらついた私は瑠衣斗にしがみついてしまった。



触れた瑠衣斗のゴツゴツとした体に、一気に顔が熱くなる。



「ご…めん…」



私がしがみついたせいで、目の前に写る瑠衣斗のはだけた胸に顔がひきつる。



うわぁぁぁ!!

もうヤダ私ってば!!



「なーに赤くなってんだよ」



「え!?ち、ちがうもん」



「ふーん?」




意地悪そうに目を細めた瑠衣斗が、いやらしく片方の口角を上げて私を見下ろす。


さり気なく背中に添えられた大きな手に、思わずピクリと体が跳ねた。



「くっ…意識しすぎ」



「もー!!そんな事ばっか言わないでえ!!」




片手で起用にはだけた胸元を直しながら、瑠衣斗が笑う。



恥ずかしくて仕方ない私は、瑠衣斗に連れられるがままに足を動かした。




それでも時々瑠衣斗が吹き出すもんだから、私はそのたびにチラリと睨み付けるしかできなかった。
< 54 / 251 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop