いちごいちえ
瑠衣斗の部屋まで戻ると、なんだかやっと気を抜く事がっき、大きく溜め息を吐く。
なんか…どうなるかと思ったけど、無事帰ってこれた……。
ガランと広い瑠衣斗の部屋は、一見キレイに片付いていのだが、少し殺風景だ。
シンプルな勉強机には、沢山の並べられた教科書や参考書。
ベッドにクローゼット、小さなテーブルにテレビやオーディオなんかもあるが、それ以外必要最低限のモノを置いていない。
こうして考えてみると、この場所とも明日でお別れなんだ。
瑠衣斗が中学まで過ごした部屋に、私が居るという事が不思議でたまらない。
瑠衣斗はどんな気持ちで、この場所をたった1人で離れたのだろう。
今の私みたいに、切なくて苦しかったりしたのかな。
「…もも?どうしたんだ、ぼーっとして。着替えないのか?」
「あ、ううん。着替える……けど、ここで!?一緒に!?」
「今更なに言ってんだよ」
言いながら浴衣の帯を緩めた瑠衣斗から、思い切り視線をそらした。
さっき河原であった事が、頭の中をぐるぐると支配していく。
背後で聞こえる、衣擦れの音がなんだかやたらと艶めかしい。
た、確かに…いろいろ見られちゃったけど!!
でも、それとこれとは話が別なんだけど!!
ベッドの足元で背中を向けたまま正座するしかない私は、無意味に自分の胸元を握りしめていた。
「ふう…着慣れないモン着ると、肩が凝る」
いつしか衣擦れの音はなくなり、瑠衣斗のスッキリしたような声が、クリアに聞こえてきた。