いちごいちえ
「う、わあぁぁ」
「手伝ってやるよ」
え!?て、手伝う!?
グイと後ろに引っ張られ、帯を解かれている事にハッとする。
何故か手慣れた手つきの瑠衣斗に、慌てて声を掛けた。
「待って!!って…なんでそんなに慣れてるの!?」
「だから、今更なに言い出すんだ。うち旅館だったんだぞ?」
「知ってるけど!!」
「だーかーらー、お袋はいつも着物着てたし、よく着物や浴衣仕舞うのやらされてたから。着付けは意地でも覚えなかったけど」
そう言いながらも、手を休める事なくどんどんと帯を取られていく。
真後ろだから抵抗もなにもできないまま、あっと言う間に帯は足元に落とされていた。
「うち浴衣の貸し出しとかもしてたからな〜。さすがに脱がしはしなかったけど、なんか懐かしい」
そう言う瑠衣斗の口振りが、本当に懐かしむようで優しかったので、私は抵抗も止めて後ろを振り返っていた。
久斗君もきっと一緒に…元気な時は手伝ってたのかな。
くるりと体を回され、正面から瑠衣斗が片膝を着いて細かな紐を取り払っていく。
柔らかい瑠衣斗の表情からは、なんだか昔を思い出しているように思えた。
「全部脱がしていいの?」
「…うん」
何の気もなく、何も考えないで私は返事を返していた。
その途端、驚いたように顔を上げた瑠衣斗に、私まで驚いて目を見開いた。
「…大胆だなあ」
「え…?」
何の事を言われているのか分からない私は、首を傾げた。