いちごいちえ
なんとなく、瑠衣斗の声が穏やかな事に、自然と肩から力が抜けた。
背中から伝わる温もりが、私に染み込んでくるようで、ガッシリとした瑠衣斗の腕に頬をスリ寄せた。
「なあ、最後だしまた一緒に風呂入らねえ?」
「入りません!!」
すっかりほぐれた私は、再びしゃんとするハメになる。
いつもの口振りで言う瑠衣斗に、今度こそ構えてしまう。
「ちえ〜…なんでたよ」
「ダメな物はダメ!!」
尚も食い下がる瑠衣斗に、少しだけ気持ちが揺れたが、ここで揺れては意味がない。
瑠衣斗と一緒にお風呂だなんて、せっかくの温泉が堪能できないに決まってる!!
てゆーか、ここで折れたら絶対いけない気がする!!
それに、大変な事になっちゃうに決まってる。。
「なんだよ、照れてんのか?」
「違ーう!!照れてんじゃなくて、恥ずかしがってんの!!」
「照れんのと一緒じゃん」
照れと恥ずかしさは全然違うでしょうよ。なんて思いながらも、私は首を縦には触れなかった。
まあ確かに…最後だし一緒に入るのもいいかな?なんて思うけど、恥ずかしすぎて一緒になんて入れないよ。
「ホントにダメ?」
「だっ…ダメっ」
「俺を1人にするのかよ」
「ひ…っ…え?」
拗ねたような瑠衣斗の声に、思わず目をしばたかせる。
ぎゅうぎゅうと抱きしめとくる瑠衣斗が、なんだか本当に可愛く思えてしまう。
たまに甘えてきたり、かと思えば意地悪してきたり。
私にはいろいろな表情を見せてくれる瑠衣斗に、心が和んでしまう。
「寂しいじゃん」
そんな私は、やっぱりますます瑠衣斗を好きになってしまうのだろう。