いちごいちえ
「あらあら。本当に瑠衣ったら、頭でもぶつけたのかな?」
「だとしたら…相当打ち所が悪かったですよね…?」
「あはは。打ち所が良かったんだよ〜」
そう…なのかな。
由良さんは笑って言うけれど、私としては恥ずかしすぎて戸惑ってしまうばかりで。
みんなの前、ましてや家族の前で、こんなに積極的にあれこれ気持ちを言葉にするなんて、全く予想もしなかったから。
「浮かれてんのよ。ももちゃんが自分のモノになってくれたから」
「う、浮かれてる…んですかね…」
「そりゃね!!こ〜んなに可愛い子が彼女なのに、浮かれない男なんて居ないよ!!」
なんて言えばいいかも分からず、再び赤くなるしかない。
ここで否定も肯定もしても、可笑しい気がするし、何よりも本当にそうだとすれば、やっぱり嬉しいから。
「さて、独占魔の瑠衣に見せてあげよう」
「あ、はい…」
後片付けを完了させ、笑う由良さんに背中を押されて扉へゆっくりと向かう。
何やらまだ言い争いをしているようで、大きな声がひっきりなしに響いている。
扉の前に立つ頃には、ドキドキとする鼓動は全速力で走っているように早い。
扉に由良さんが手をかけた瞬間、それはピークを迎え、思わず息を飲んだ。
「もお、喧嘩しないの!!2人とも、ももちゃんに嫌われるよ?」
ガラリと躊躇なく由良さんが開けた扉の向こうに、一瞬で目が奪われた。
少し驚いたように目を見開いた瑠衣斗が、ピタッと固まったまま私を見つめている。
深い濃い緑の浴衣に、黒の帯を腰に浅くし、少しはだけた胸元。
あまりの瑠衣斗の色っぽさに、心臓が一瞬止まったみたいだった。