いちごいちえ




力の入らない私を、瑠衣斗が優しく背中を撫でる。


瑠衣斗に寄りかかるようにしてしがみつく私に、呆れたような瑠衣斗の声が耳元に届く。



「結構キツいって言っただろうが」



「ん…だから…ね?」



「…だから?」



力無く言う私を、受け止めながらも優しく問いかけてくれる。



恥ずかしいし、口ごもってしまいそうだけれど、今伝えなきゃ私はきっと口にはできないから。



「…私…だけじゃなくて……その……」



「う…うん」



それでもやっぱり肝心な所で足踏みしてしまう私に、瑠衣斗でもさすがに気付いているだろう。


私の気持ち。

私の願いは……。



「るぅと…一緒がいい」




瑠衣斗の驚く気配が、全身を伝わって感じる。


戸惑ったようにピクリと止まってしまった手のひらが、その証拠だろう。



「…いいのか?」



本当はまだちょっと怖いけど、瑠衣斗なら大丈夫。

瑠衣斗だから、大丈夫なんだ。



そっと肩を抱かれて、正面から瑠衣斗が私を覗き込む。


やっぱりちょっと驚いたような顔の瑠衣斗に、私は小さく頷いた。



「もも………いや、待て、ダメ。ダメだ」



「…え?」



予想外の言葉に、熱が冷めていく。

代わりに、何だか泣きなくなる感覚に教われる。



「いや、だから違う!!まさかここでとは考えてなかったから…いや、俺はめちゃくちゃ嬉しいんだけど、……準備がな?」



「…準備?」



焦ったようにまくし立てたかと思えば、最後には意味深にニヤリと笑われ、耳元でやたら色っぽく囁かれた。




「…アレ、持ってきてない」
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