いちごいちえ




………アレ?


アレ…って?なに?



顔を真正面から見つめたまま、思わず首を傾げた私を、瑠衣斗がぶっと吹き出す。



「くっ…アレってのはな、ゴムだよ」


「ごっ…!?」


「それに、ここじゃももちゃんを堪能できないしなあ」


「たんっ…!?」




有り得ないほどに真っ赤であろう私を、やっぱり瑠衣斗が笑う。


なんだか悔しいやら恥ずかしいやらで、ぐっと瑠衣斗の首にしがみついた。



「もう、るぅ笑いすぎ…」




何だか意味もなく、泣きそうな感覚に襲われる。


自然と声音が弱々しくなってしまい、少し喉が震えてしまう。



「もも…?」



「……なに」




そんな私に気付いたのが、笑いを抑えた瑠衣斗が、優しい声で名前を呼ぶ。



ゆっくりと撫でてくれる大きな手のひらが、私を宥めてくれているようだ。



「ももの気持ちがホントに嬉しいんだ。…ありがとうな?」



そんな言葉に、声も出せずに小さく頷いた。


瑠衣斗の気持ちだって、私なりに十分に分かっているつもりだ。


今の2人の時間を、大切にしたい気持ち。


それは私だって、同じだから。だから、焦った訳でもない。



「もう少し慣らしてからって思ってたんだけど…ってそんな事はよくて」



「…え?」



「ももが大切なのはもちろん。でも、限界ってのも本音」



そうだよね。私、るぅに窮屈な思いさせてると思うから……。


「好き…ぐらいの時に、自分のモンにしておけば良かったって後悔してる」



そんな私の気持ちとは裏腹な言葉に、耳を疑った。



「大切すぎて、自分でもどうすればいいか分からない。こんな気持ち、生まれて初めてだよ」
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