いちごいちえ




そんなこんなで、ようやく露天風呂から上がる事になる。


私を抱えたまま運ぼうとする瑠衣斗を必死に止め、なによりも着替えが一番心臓に悪かった。



「みみみみないで!!むむ、向こう向いて着替えて!!」



「なんで」



「な、なんで!?あたっ…当たり前でしょう!!」



必死に胸元を握り締め、及び腰になりながらも立ち向かうしかない。


間近に迫る瑠衣斗の顔は、髪が濡れて肌が上気して微かに赤く、何とも色っぽい。



あぁぁぁ…私、絶対寿命縮む……いや、縮んでる。




「そんな照れなくても…さっきはあんなに積極的だったのに」



「なっ…!?」



「だからそんな照れんな」



「いやそこ繋がらないから!!」



「そか?」



あっけらかんとした瑠衣斗に対して、私は全く余裕なんてない。


クスクスと笑いながらも、着替え始めた瑠衣斗から思い切り目をそらし、背中を向けて頭を働かせる。



ええっと…とりあえず、バスタオルを体に巻いて…きちんと拭けないけど早く下着を着けちゃってから……。



「もも?」



「ひゃあぁっ」



「…なんだそれ。とりあえず早く着替えろよ。夏だからって、湯冷めしない事もないんだからな?」



背後から覗き込まれ、すぐ顔の真横に瑠衣斗の息がかかる。


思いがけずピクリと過剰に反応してしまい、瑠衣斗がクスクスと笑いながら頭を優しくポンと撫でた。



「俺先に出てるから。ちゃんと体拭いてから出てこいよ」




……え…あれ?



「早くな?」



予想外の言葉に呆然とする私を余所に、瑠衣斗が半裸(上のみヌード)で出て行った。


からかわれるとばかり思っていた私は、逆に呆気に取られてしまったのだった。
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