いちごいちえ
期待外れ…とはかなり語弊があるが、いつもならもっとこう……。。
そう考えた思考を、強制終了させる。
せっかくできたチャンスなのだから、ここは素直に着替えた方が賢明だろう。
内心、突然入ってきたりするつもりなんじゃ…とも思ったが、瑠衣斗が入って来る気配すらしない。
慌ただしく着替えを済まし、瑠衣斗の元へと急いだ。
ドアを開け、真っ直ぐに進んだ所で、今度はきちんと上を着た瑠衣斗が壁により掛かるようにして私を待っていた。
「早かったじゃん」
駆け足で近づく私にそう声を掛けると、瑠衣斗が八重歯を覗かせて無邪気に笑う。
「だって…るぅが早くって…」
その笑顔、反則だよ…。
思わず口ごもってしまい、お風呂上がりで火照っているはずなのに、更に顔がぽっと熱くなる。
「ホントに、素直でよろしい」
肩を抱き寄せられながら、瑠衣斗が優しく耳元で囁く。
さっきまであんなに意地悪ばっかしたのに……ホントにずるい。
そんなに優しく言われたら、文句の一言も引っ込んで出てこないよ。
「もも、キスして」
「うん………え!?」
「ん。ほら早く」
思わずポワンとしていた所に、いきなりふっかけられてしまった無理難題に、何も考えずに頷いてしまった。
やっぱり…やっぱり意地悪だあ!!
「俺を1人にしたろう?だから、ももからキスしてくれたら許す」
甘い瑠衣斗の拗ねたような口振りに、不覚にも胸がギュッと縮んでしまったのだった。