いちごいちえ
「ねえ、卒業アルバムとかないの?」
ようやくまったりとしてきた所で、ふと思い付くままに隣の瑠衣斗を見上げた。
「ん?アルバム?」
何の気もなさそうなキョトンとした瞳に、私は軽く頷いた。
やんちゃだったらしいるぅ。
幼なじみの大輔さんとは、会えば殴り合いをしていたらしいるぅ。
学校をサボってばかりいたらしいるぅ。
そんな瑠衣斗を、純粋に見てみたいと思った。
「うん。見てみたい」
「…まあ…あるけど。見ても別に何も面白くないぞ」
やっぱり瑠衣斗は、乙女心と言う物を知らないのだろう。
それとも、好きな人の昔の事を知りたいって思うのは、私だけなのだろうか。
「うん。面白さなんて求めてないしね」
そう言った私は、数分後には笑いが止まらなくなっていた。
「えー!!なにこの顔!!試合後のボクサーみたい!!」
「…これは大輔と喧嘩した。次の日が野外学習だった」
写真の中の瑠衣斗は、どれも睨み付けるように鋭い目つきで、所々に怪我をしている写真が多い。
今見ていた写真は、みんなジャージを着ているのに、1人だけ制服のままダルそうに写っている写真だった。
しかも、顔面がとてもカラフルな色合いで。
「じゃあこのほっぺにでっかいガーゼしてるのは?」
学校祭と書かれた見出しの中の写真は、瑠衣斗の目が覚めるような金髪が所々に写っている。
「…ヨネに殴られて奥歯が折れた」
「え?ヨネさんにも殴られちゃったの?」
「俺はあいつの前歯折ってやった」
ツンとしたように答える瑠衣斗は、なんだか照れているようにも伺える。
ホントに喧嘩ばっかしてたんだね……。
ヨネさん…あんなに優しそうなのに。
まともに怪我をしていない写真も多いが、どれもこれも怪我をしている写真ばかりに目が行ってしまう。
そんな中、瑠衣斗が鬱陶しそうな顔をして、腕にしがみつくりなさんの写る写真を見つけ、胸がギュッと音を立てた。