いちごいちえ
ページは遡り、途中から瑠衣斗の表情が変わる。
冷めたような、光すら写していないような、無表情な瑠衣斗が写る写真ばかりが増えていく。
なんだか痩せていて、怪我はしてないが痛々しい姿に、一瞬で胸の中が黒く濁る。
「るぅ…痩せてるね」
「だなー。あんまり覚えてねえけど、多分この時の反動で高校の時はよく食ったのかも」
「よく食べ…どころじゃないと思うよ?」
中学二年。
弟さんは、もう亡くなった後なのだろうと、安易に予想がついた。
瑠衣斗がこんな姿になってしまうなんて、想像もしなかった。
簡単に考えていた訳ではないけれど、瑠衣斗の抱えている物の大きさが、リアルに伝わってくるような感覚だ。
「この頃から少し経って、家で猛勉強始めた。そしたら、いろいろ久斗の事考える前に、集中もできて楽になったかな」
懐かしむような口振りに、物凄く重みを感じた。
まだ中学生だった瑠衣斗には、どれだけ辛かっただろう。
どれだけ重かっただろう。
きっと、半端ない量の時間を、ずっと机に向かっていたのかもしれない。
寝る間も惜しんで、ひたすらに。
私も、あの頃……そうだったから。
「夜になると遊んでようが何してようがダメで。寝てもダメで。くたくたになって意識無くすまで文字書いてたっけ」
呆れたように可笑しく笑う瑠衣斗は、本当に懐かしむようで、本当に楽しそうで。
本当に、瑠衣斗を愛おしいと思った。
「そのかいあって、高校も受かって…。しかもな、ももに初日から会えて、今一緒に居れる。これは久斗からのご褒美だったりして?」
笑わせようと言った言葉なのか、笑って言う瑠衣斗に私は自然と頬を緩めた。
「…そうだとしたら、完璧に私はそのご褒美に、便乗させてもらってるけどね?」