いちごいちえ
「すごいね〜…スポーツ少年だったんだ」
「いや、スポーツ馬鹿だな。まあ、中学生になったら柔道以外めっきりやらなくなったけど」
テーブルに肘を着いて、顎を乗せた瑠衣斗がペラペラとゆっくりページを捲る。
周りが少しずつ大きくなっていくのに対して、ずんずんと背の高くなってく瑠衣斗に小さな笑いが漏れる。
「くりっくりでパッチリした目だったのに、だんだん鋭くなってく……」
「人見知り激しかったから。カメラマンの事警戒してんじゃねー?」
「…警戒…睨んでるんじゃなくて?」
本格的に鋭い目つきに磨きが掛かったのは、中学に上がってからでしょう?……とは、言わなかった。
自ら地雷を踏むような行為は、怖すぎてできるワケがない。
最近は特に、パワーアップキャンペーン中らしいので要注意だ。
「なんか…やけに大人っぽい小学生だよね。五年…六年生?」
「六…年生上がったばっかだな。身長伸びるのが止まんなくて体中痛くてな〜。一生止まんねえんじゃねえかと思った時もあった」
「嫌みにしか聞こえない」
瑠衣斗から小さな頃の話が聞けて、胸が暖かくなる。
瑠衣斗の地元で最後に過ごす夜に、こうして過ごせて良かったと、心の底から思った。
記念にアルバムを写メさせてもらおうかとも思ったが、タダでは済まない気がしてすんなりと諦めたのは言うまでもない。
たくさんの瑠衣斗の思い出に、初めて触れさせてもらったようだ。
これだけ、私には気を許してくれているのかと思うと、自然と頬が緩む。
「…なに笑ってるんだ。もう終わったろう?そろそろ寝るぞ」
満たされた気分のまま、頷いて瑠衣斗と共にベッドへと潜り込んだ。
なんだかんだ疲れていたようで、私はすぐに眠りの世界へと落ちていった。