いちごいちえ




恥ずかしさでいっぱいになるのと同時に、少し寂しさが混じり込む。



この場所でこんな風に朝を迎えるのも、今日で終わりなんだ……。



そう思うと、恥ずかしさよりも寂しさが胸の内を浸食していく。



夕べ見た瑠衣斗のアルバムも、近くを流れる川も、町の人たちも。


今日でお別れなんだ。



もう一生会えない訳ではないのに、こんなにも感傷的になってしまうのは何故だろう。



そんな想いの中、一瞬何か物凄く嫌なモノが脳裏を過ぎった。


「……もも…?どう…した?」



「えっ?あ、ううん。なんでも」



自然と無理矢理作った笑顔が引きつってしまい、無意識に顔を強ばらせていた事にハッとする。


何だか胸がモヤモヤしてスッキリしない。


腹の底で、何かが居座っているようだ。



「ふーん…」



「や…ホント、なんでもないから…」



「…そうか」



自分でもよく分からないから、なおのこと何も言えない。


あからさまに誤魔化す私を、瑠衣斗は怪しむように見つめ返したが、諦めたように表情を崩した。



「…ま、ならいいけど。なんかあれば何でも言え」



「うん…ありがとう」




でも結局、私の胸に広がる不快感は、収まるどころか次第に強くなるようだった。





その理由に気付くのは、私がまだ目を背けていた証拠とも気付かずに。
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