いちごいちえ
店内の大きな柱で死角になっていたせいで気付かなかったが、顔を覗かせた人物に、思わず目を見開いた。
「ヨネさん!!大輔さん!!」
「よお、って瑠衣〜そんな嫌そうな顔すんなよ!!ももちゃんは今日も可愛いなあ!!やっぱりソイツじゃなくて、俺にしない?」
「お、瑠衣が般若に化けたぞ」
まさか会えるとは思ってもみなくて、嬉しくて駆け寄った私をヨネさんと大輔さんが笑顔で迎えてくれる。
今日もワイルドな大輔さんと、笑顔が爽やかな真っ黒に日焼けしたヨネさん。
予想外の登場ではあったが、大輔さんには今日帰る事を瑠衣斗が告げていた事を思い出し、会いに来てくれたんだと思った。
「冗ー談だろう!?んな本気にすんなよ!!」
「大輔。瑠衣に冗談は通じないだろう」
苦笑いするしかない私は、思わずチラリと瑠衣斗を見上げてみたが、やっぱり相当ムカついている様子だ。
「んな怒るなよ!!今日は見送りに来ただけだ!!」
「そうそう、りゅうちゃんとそうちゃん達、帰りにうち寄ってってくれだぞー。慶兄はホントに変わらねーなあ!!」
矢継ぎ早に話されて、思わず驚いてしまう。
みんなで帰りに、ヨネさんのとこ寄ってったんだ!!
結成された漫才トリオを思い出すと、今でも可笑しくて笑えてきてしまうから不思議だ。
「あいつら…なんも聞いてねえし」
「お前の変な武勇伝、腹一杯教えてもらった」
その言葉に、大輔さんが大笑いしだしたので、間違いなく大輔さんもヨネさんに聞いたに違いないだろう。
瑠衣斗が思い切り眉間に皺を寄せたが、そんな瑠衣斗に対して、優しい笑顔でヨネさんが言う。
「ま、また帰ってこいよ。ももちゃんとみんなと」