いちごいちえ
優しい笑顔と言葉に、胸がギュッと切なくなった。
これでお別れだと改めて実感すると、何だか無性に寂しくなるんだ。
嬉しい言葉に浸ってしまい、見上げた瑠衣斗の表情までもが穏やかな表情に変わる。
でもやっぱり、ヨネさんはヨネさんで大輔さんは大輔さんだった。
「またいろんな武勇伝増やしてこいよ!!楽しみにしてるからなあ!!今度は搾乳させてやるから!!」
「親父とお袋に話したら死ぬほど笑ってたぜー?こりゃ今頃町中が瑠衣の武勇伝で持ちきりだな!!」
どんな武勇伝かは分からないけども、きっとみんなが笑顔になるような瑠衣斗の武勇伝に違いないのだろう。
内容が気になるだけに、今すぐ便乗して聞いてしまいない所だが、再び眉間に見事なまでの縦皺を刻んだ瑠衣斗の手前、そんな事はできなかったけれど。
「お前ら……ほっとけよ!!」
「なんでだよ〜もったいないだろう?」
「なにがもったいねえんだよ!!」
「いや〜、瑠衣がそんなに忍耐強いとはなあ!!」
曖昧に笑うしかない私をよそに、ヨネさんと大輔さんの総攻撃は止まらない。
なんだかやっぱり、地元の友達の前のせいか、子供っぽく感じる瑠衣斗に、卒業アルバムの写真が蘇ってきて自然と頬が緩んだ。
みんなとこうやって、毎日言い合いしてたのかな。
……って言っても、こんな可愛いモノじゃなかったに違いないんだろうけれど。。
思わずヨネさんの前歯が気になったが、気付かれない程度にチラ見しておいた。
「ももお!!るーいー!!」
バタバタと小さな足音に、ハッとして振り返る。
そこには、花束をしっかりと抱え、私達の方へと笑顔で駆け寄る隼人君が居たのだった。