いちごいちえ
「瑠衣?もも連れてきたわよ」
しゃがみ込んだまま振り向くと、由良さんがももちゃんを連れてきた所だった。
今日も大きく尻尾を降って、まるで笑っているような表情で大人しく由良さんの横に座っている。
「預かってくれてありがとな。あと花も」
「いーわよ〜♪プチ同棲は楽しめた?」
「プ…おっ、ちょっ…由良!!余計な事言うなよ!!」
ばっと顔を赤く染めた瑠衣斗が、勢い良く立ち上がりながら大きな声で怒りだす。
でも顔は真っ赤なものだから、迫力なんてなくて余計に笑われている。
つられるようにして私まで顔が熱くなり、思わず目を泳がせた。
「あら、瑠衣ったら!!やらしい〜わねえ。あんたも大きくなったもんだわ」
「や、やらしい…?じゃねえ!!ほっとけ!!」
「なに?ひょっとしてまだなの〜?ホントにヘタレねえ」
「だからヘタレじゃねえって!!こんなとこでんな事言うな!!」
近くの席に座るおばさんの言葉に、私まで爆発しそうになる。
更には由良さんの言葉にまで、思わずしゃがみ込んだまま倒れそうになった。
うわあああ…これじゃあ自らネタの提供しちゃってるようなもんだよ……。
は、恥ずかしい……。
「るいまっか〜!!たこさーん!!」
「やべー!!写メ撮りてえ!!」
「隼人、瑠衣は本当はタコさんなんだぞ〜」
大輔さんとヨネさんの笑い声と、周りのお客さん達の笑い声に、私と瑠衣は真っ赤になるしかなかった。
なんだか立ち上がるタイミングを逃してしまった私は、赤くなってうずくまるしかなく、そんな私をまた隼人君が無邪気に笑っている。
今日でこの土地を離れると言うのに、大きな置き土産を置いていく事になってしまったのだった。