いちごいちえ
「もういい!!行くぞもも!!」
「へっ!?あ、ああ…うん」
ぐいと腕を掴まれて、力強く立ち上がらせられる。
みんなの穏やかな視線が、今はとてつもなく恥ずかしい。
最後なのに。
最後の最後でこんなお別れ方って……。
「ま、気を付けてね?ももちゃん、瑠衣ヘタレだけどよろしくね」
「あ…はい。ありがとうございました」
由良さんの言葉に、素直に頷いた私を、横から瑠衣斗が不機嫌そうに見つめる。
由良さんの言ったヘタレと言うセリフに反応しての事だろうが、あえて気付かないフリをした。
クスクスと笑うヨネさんと大輔さん、おまけに隼人君。
本当にサヨナラなんだと思うと、改めて寂しさが募る。
「祐二〜!!瑠衣達行っちゃうよ〜!!」
厨房の方へと由良さんが声を掛けると、少しして祐二さんが顔を出した。
ニコニコと笑顔を浮かべながら駆け足でやって来ると、私に小さな手提げカバンを差し出す。
「はい、これ瑠衣と一緒に食べてな」
「えっ…いいんですか?」
「これくらいしかできないけど、持ってってくれ」
中身までは何かは分からなかったが、アルミホイルで包まれたモノが中に入っており、それを見た私は顔を上げた。
「ありがとう…ございます」
嬉しくて嬉しくて、胸がきゅっとする。
胸がいっぱいで、気持ちが溢れてきそう。
「隼人、ももちゃんに渡すモノがあるんだろう?」
「…え?隼人君が?」
見下ろすと、少し俯いてモジモジとする隼人君が、ほんのりと頬をピンク色に染めて、私を伺うようにチラチラと見ていた。